月刊誌 指導と評価

2014年 9月号
  1. 2014年 9月号 Vol.60-9 No.717  定価:450円
特集
特別支援教育を進める
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特集

特別支援教育の現状と一層の推進に必要なこと

筑波大学教授・元国立特別支援教育総合研究所上席総括研究員  柘植 雅義

★2001年から、それまでの特殊教育から新たな特別支援教育への転換が徐々に始まり、現在に至っている。この14年の間、必要な法整備がなされ、関連する通知が発出され、モデル事業や研修会があいついで進められていった。これにより、幼稚園から、小中学校、高等学校に至るまでの、特別支援教育体制が整備され、機能しはじめた。その一方で、その機能の在り様や深まりが十分ではないとの指摘や、地域間、学校間、教師間による、取組の差が話題になっている。そして、国連の障害者の権利条約の批准に伴う、さらなる特別支援教育の充実発展に向けた取組が始まっている。そこで、本稿では、特別支援教育の現状の把握と、一層の推進に必要なことを整理して述べる。

特別支援教育におけるPDCA

国立特別支援教育総合研究所上席総括研究員  笹森洋樹

★特別支援教育は、学校全体の組織的、計画的な取組が求められる。組織による共通理解のもと限られた時間で効果的に効率よく実践していくためには、PDCAサイクルのようなシステム化され、客観性のある仕組みを活用していくことが望まれる。PDCAサイクルは、Check(評価)を想定した具体的なPlan(計画)が十分に検討されないとうまく回らない。Check(評価)→Action(改善)を重視したイメージから、Plan(計画)→Do(実行)を検討していくことが、継続したスパイラルアップにつながっていく。

特別支援教育におけるアセスメントと支援

聖徳大学教授  東原文子

★日本版KABC-Ⅱでは同時・継次モデルで知られる従来のモデルが拡張されたカウフマンモデルと、CHC理論を基にしたCHCモデルの2つのモデルで解釈できる。カウフマンモデルでは、新しく加わった学習尺度や計画尺度の位置づけが重要である。CHCモデルでは、WISC-Ⅳと組み合わせれば、アセスメントできないCHC能力を他検査で補うことや,同じCHC能力における整合性が検討できる。
★本稿ではある通常学級における学習困難児を取り上げ、CHCモデルによる認知のアセスメントと、それに関連する指導事例を紹介する。

ユニバーサルデザイン

教育臨床研究機構理事長  中野 良顯

★ユニバーサルデザインは、建築学や製品設計の概念であり、バリアフリーがキーワードである。
★教育分野では学習のユニバーサルデザイン(UDL)と呼ばれる。
★センター・フォー・アプライド・テクノロジー(CAST)は、UDLガイドラインを提唱した。授業をバリアフリーにして、すべての子どもが学習できるカリキュラムと教授を設計しようという提案である。
★UDL実現にはICTなど学習の支援技術の発展が一つのカギとなる。
★もう一つのカギは、教員の多忙さや大規模学級など、教員の活動を阻むバリアの除去である。

通常学級で特別なニーズのある子どもをどう支援していけばよいか-小学校

兵庫県宝塚市立高司小学校教諭  尾﨑 朱

★通常学級で、発達障害のある「おとなしい子ども、低学力の子ども」の学習支援や生活支援が不十分。その子どもの見取り、支援が必要である。
★子どもの支援の土台として学級経営が重要である。また、個別のニーズ把握のために学校内部や外部の巡回指導員と連携し、実態把握をすることがまず大切である。
★実態把握を支援につなぐために「保護者支援」や「障害理解の取り組み」が欠かせない。本校でのSSW(スクールソーシャルワーカー)との連携を報告する。
★どんな支援を、どのように継続していくかが課題。鍵を握るのは授業改善である。

通常学級で特別なニーズのある子どもをどう支援していけばよいか-中学校

横浜市立美しが丘中学校長  高橋和則

★「障害者の権利に関する条約」の批准に伴い「合理的配慮」を行わなければならない現在、通常学級で特別な支援を要す子どもをどう支援していけばよいか、迷うところが多い。これについて、学級担任や教科担任による実態把握と具体的な支援策について事例を紹介した。また、支援を進めていくうえで必要不可欠な学校内外にある関連機関との連携方法についても、抱える課題と解決方法について自論を交えて紹介し、教員としての役割を再確認した。

特別支援教育における学校長の役割

千葉県教育庁北総教育事務所特別支援アドバイザー  片桐 力 

★校長の役割は、リーダーシップであり、それを支えるのは特別支援教育の理念である。
★理念を実現するには、校長の権限のもとに、今すぐできること、長期的に取り組むべきことがあるが、教育環境などの目に見える形で表すことが重要である。
★通常学級での特別なニーズのある子に対する教師の対応は、ニーズのない子にとってもわかりやすい授業につながり、お互いが特性に応じた人間関係を学ぶチャンスになる。 
★担任一人に抱え込ませないチーム支援の体制づくり。
★校長は子どもと教師の良きモデルに。

連載

21世紀をよりよく生きる資質・能力の育成(6)総合的な学習の時間の学力論と学習論が指し示しているもの 上智大学教授
奈須 正裕
学級づくり実践セミナー(5)二学期の再スタートに向けて 都留文科大学特任教授
品田 笑子
教師力アップセミナー(5)学校評価をどう進めるか 千葉市立こてはし台中学校長
堀米 宏
教育・心理検査を上手に活用しよう(6)標準学力検査CRTの理解と活用 (一財)応用教育研究所副所長
宮島 邦夫
応用行動分析学入門(6)カリキュラムと授業を設計する③プログラミングの技法を学ぶ 教育臨床研究機構理事長
中野 良顯
新しい教育評価の動向(35)/C.Suurtamm,C他「数学教育における評価の実態:数学教育の改革の中で 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
感度を高める言葉の教育(6)小学校の専門語 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(25)5年 青山学院大学教授
坪田 耕三
小学校理科の授業づくり(29)4年B(3)「天気の様子」における学習展開のポイント 京都文教大学准教授
大前暁政
どうする?小学校図画工作の授業(9)中学年における[共通事項]と材料や用具 埼玉県戸田市教育委員会主幹兼主任指導主事
山根淳一
教育測定・統計入門(30)2次判別分析法を用いた三群の判別 法政大学教授
服部 環
学校の法律問題(18)公立学校教員の評価を考える 地方公務員法改正の意味 日本女子大学教授
坂田 仰
だんわしつ/「生きている命」 栃木県那須塩原市立三島小学校長
橋本 彰
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