月刊誌 指導と評価

2015年 11月号
  1. 2015年 11月号 Vol.61-11 No.731  定価:450円
特集
いま子どもたちはー教師がSOSに気づきにくい子どもたちに焦点をあててー
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特集

いま、子どもたちは…

東京成徳大学教授  田村節子

★社会が猛烈なスピードで変化していく中、いまの子どもたちをめぐる状況も一変している。子どもたちの学校生活の質を低下させる問題状況として今回の特集では「緘黙」「夜尿症」「性的マイノリティ『LGBT』「ゲームへの依存」「SNSいじめ」「リベンジポルノ」を取り上げた。これらは子どもたちの自尊心に大きな影響を与え教師がSOSに気づきにくい。
★自尊心が低下すると二次障害として、学校に行けなくなるなどさらに大きなつらい問題状況へとつながっていく。
★私たちにはいまの子どもたちへ最新の知識をもって対応することが求められている。

選択性緘黙の子どもの特別支援

筑波大学(人間系障害科学域)教授  園山繁樹

★選択性緘黙は「家庭では話せるのに、幼稚園や学校で話せなくなる」状態である。このような子どもの早期発見は容易であるにもかかわらず、見過ごされていることが多く、特別な支援がされていない場合が多い。また、本人が話したくなくて話していない、自然に話せるようになる、頑固である、といった間違った理解をされてしまうこともある。選択性緘黙の子どもの多くは、学校場面で緊張・不安を強く感じている。そこで、学校で安心して過ごし、授業に積極的に参加し、それを基盤に学校で話せるようにしていく支援の考え方と方法を紹介する。

夜尿症

たむら小児科クリニック院長  田村和喜

★日本で夜尿症が学問的に取り上げられ、日本夜尿症研究会(夜尿症学会の前身)が立ち上げられて約30年になります。医療従事者の間では夜尿症に対しての理解も深まり、学会への参加者数も年々増加しています。しかし、一般の方々への啓蒙は未だ十分とは言えず、誤った対処により過度の不安を抱える子どもたちやご両親も見かけます。かつては夜尿症に対して精神論などが持ち出されるケースもありましたが、それは大きな間違いです。身長の伸びに早い子と遅い子がいるように、夜尿症も成長の過程に見られる個人差と考えるのが適当と思われます。
★夜尿症は悪くなる病気ではないこと、多くは親や本人の責任ではないことを理解し、家族全員でおねしょの減っていくことを楽しんでほしいと思います。

LGBT (性的マイノリティ)

福島学院大学教授  梅宮れいか 

★LGBTとは、性指向が身体性の同じ人に向いている人(Lesbian、Gay)、性指向が両方の性に向いている人(Bisexual)、自分の身体性と反対の性別で生きることを望む人(Transsexual/Transgender)を指す言葉である。これらの人々は性的マイノリティとよばれる。LGBTは、異常では無いが、偏見視され、差別を受けてきた歴史を持つ。今日においても、差別を恐れ、沈黙しているところから「サイレント・マイノリティ」とも呼ばれる。自分がLGBTであると認識するのは主に思春期からと言われるが、より低年齢から気づいている場合も多い。自己を否定しないように支援する必要がある。

ゲーム依存症とは

精神科医  岩崎正人 

★ゲーム依存症の形成過程、症状、サイン、対処法や治療法について説明した。
★なかでもゲーム依存症は、予防が重要である。その担い手は親だ。親の役割は、ゲームより楽しいことを子どもに伝え、ゲームとのつきあい方の手本を示し、むやみにゲームに近づけないことである。
★学校では、その親を支えることができる。例えば、「ゲーム依存症に関する講座」を開催することによってバックアップしたい。

SNSいじめ

甲子園大学准教授  金綱知征 

★ネット上でのコミュニケーションの多くは、自身の感情の発信や、相手の感情の読み取りといった感情の相互交換がむずかしい。そのため意図せずに相手を傷つけたり、誤解させてしまうような言動をしてしまうことも少なくない。そうした言動に対しては、謝罪や弁解をする機会も与えられぬまま報復的な攻撃が加えられることもある。ネット上では些細な行為が被害にも加害にもつながることを自覚し、ふだんから高い危機意識をもって予防行動をとることが被害・加害両方へのリスクを低めることにつながると言えよう。

生徒間における性暴力 ~性的いじめ、デートレイプ、リベンジポルノ~

大阪大学准教授  野坂祐子 

★生徒の性暴力被害は深刻だが、その多くが潜在化している。性的いじめ、デートレイプ、リベンジポルノを取り上げ、それぞれの特徴を整理した。いずれも被害生徒に与えるダメージの大きさに対し、加害生徒の罪の意識は乏しく、ときに周囲も被害者の落ち度を責めてしまいやすい。ネットを介した性暴力は事態を深刻化しやすいが、自分に対する関心や居場所を求める生徒は、リスクのある行動をとりやすい。学校は、予防と早期発見、被害-加害生徒双方への指導と支援が必要であり、生徒のニーズを理解した支援を行うことが求められている。

連載

「学校づくり力」アップセミナー(8)特別活動指導力が高まる学校づくり 岐阜聖徳学園大学教授
玉置 崇
QUで学級集団づくりと学力向上を図る(8)山梨県甲府市の取組③取組と成果 早稲田大学教授
河村 茂雄
わたしたちの学校づくり(15)「教師の秘伝」を活用した川崎小学校の教育 神奈川県川崎市立川崎小学校長
吉新一之 
目的別文章の書き方(8)作文の推敲課程~書き手の意識は変わるか 十文字学園女子大学特任教授
内田伸子 
感度を高める言葉の教育(20)言葉の組み合わせ 十文字学園女子大学特任教授
内田伸子 
新教育課程における教育評価(5)教育課程の構造化・その例 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
道徳をこれからどう指導したらよいか(7)問題解決型の道徳授業で特別な支援を必要とする生徒が主体的に学ぶ 岐阜県多治見市立陶都中学校教諭
丹羽紀一 
道徳をこれからどう指導したらよいか(8)教育者は、どう教壇に立つべきか~道徳教育を超越して~ 岐阜県多治見市立陶都中学校教諭
丹羽紀一 
新しい教育評価の動向/L・リム「批判的思考をどう指導するか」批判的思考、社会科教育とカリキュラム:社会的、関係論的な認識論から考える 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
学校の法律問題(32)学校評価 日本女子大学教授
坂田 仰
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(39)6年 青山学院大学教授
坪田 耕三
教育測定・統計入門(43)構造方程式モデルにおける分散共分散表現 法政大学教授
服部 環
だんわしつ/「はてな?」の先にあるもの 二葉看護学院ほか非常勤講師
小田 勝己
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