月刊誌 指導と評価

2017年 8月号
  1. 2017年 8月号 Vol.63-8  No.752  定価:450円
特集
★第1特集:問題行動とカウンセリング★第2特集:新学習指導要領における指導と評価(2)算数数学、理科、図画工作・美術
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特集

第1特集:問題行動の「見方・考え方」とカウンセリング●問題行動の「見方・考え方」

文教大学教育学部教授  会沢信彦

★生徒指導・教育相談においては「予防」「開発」「発達促進」などの重要性が強調されるが、問題行動の理解と対応は生徒指導・教育相談の原点である。
★新学習指導要領では「「見方・考え方」が強調されているが、問題行動の理解と対応においても多くの「見方・考え方」にふれることが大切である。特に、カウンセリング理論は、多様な「見方・考え方」が存在することを教えてくれる。
★カウンセリング理論を学んで多様な「見方・考え方」にふれることで、子供理解が深まるとともにより効果的な支援を行うことができる。まさに、子供を理解し対応する力が「鍛えられていく」のである。

第1特集:問題行動の「見方・考え方」とカウンセリング●認知行動カウンセリングによる問題行動の「見方・考え方」

群馬大学准教授  岩瀧 大樹

★認知行動カウンセリングの中核には、考え方は物事の受けとめ方を取り上げる「認知療法」と、適切な行動の習得や変容を目標とする「行動療法」がある。問題行動の理解と対応においては、問題を「個人」と「環境」の視点から整理したうえで、個人の側面に焦点化して問題解決に向けた共同作戦をクライエントと話し合う。本稿では、Aの事例についておもに認知的な側面からのアプローチによる支援を検討する。

第1特集:問題行動の「見方・考え方」とカウンセリング●応用行動分析による問題行動の「見方・考え方」

立教大学教授  大石幸二

★応用行動分析は、学習理論をもとに個人や集団の行動を包括的にとらえる手法である。行動の前後関係を冷静に見つめ、取り扱うべき問題に効果的な介入を行おうと試みる。本稿では、「キレるA」の事例をどのように「見立て」るかについて論説した。特に、児童生徒の実態を把握する際に重要となる「生態学的情報」と応用行動分析の鍵概念である「機能的行動アセスメント」について詳しく紹介した。応用行動分析の見方・考え方に共鳴された方には、組織行動マネジメントや行動コンサルテーションの実践についても発展的学習をおすすめしたい。

第1特集:問題行動の「見方・考え方」とカウンセリング●アドラー心理学による問題行動の「見方・考え方」

東洋学園大学教授  鈴木義也

★不適切な行動(=問題行動)は、勇気と共同体感覚の不足からもたらされるとアドラー心理学は考えている。したがって、不適切な行動の対処に際しては、子どもの勇気と共同体感覚を損なわないような配慮が必要である。さらに、子どもやクラスの行動がますます有益なものになっていくように、適切な行為(=良い行動)も意識的に取り上げて肯定する。担任の指導は、相手の意見に耳を傾ける対話を忘れず、明確で公正に行い、命令より応援を旨として子どもの勇気を培う。一方で、当該児童に否定的に関わりすぎてクラスの雰囲気を悪くしないように配慮し、子どもたちの共同体感覚を育てるために民主的で楽しいクラス運営を行う。

第1特集:問題行動の「見方・考え方」とカウンセリング●ブリーフセラピーによる問題行動の「見方・考え方」

愛媛大学准教授  相模健人

★ブリーフセラピーには、「クライエントとセラピストが協力して」、「常にクライエントの求めるニーズに敏感であり続け、求められる心理援助というサービスを提供しようとする」特徴がある。
★本稿ではその中でも解決志向ブリーフセラピーを取り上げている。事例を見て困っている学級に関わるものを対象とし、リソースや「例外」を見つけて拡大する姿勢が必要である。WOWWアプローチやサポートグループを用いながら、学級の「例外」を拡大し、A君をサポートする。保護者にも改善している学級を見てもらい、A君の保護者には個別面接を行い、ねぎらいながら「例外」を見つけて拡大していく方法が考えられる。学校現場での「例外」を常に見つけて拡げていく姿勢が重要である。

第1特集:問題行動の「見方・考え方」とカウンセリング●学級経営心理学による問題行動の「見方・考え方」

長崎外国語大学専任講師  藤原 和政

★本稿は事例Aのキレるという問題行動について、学級経営心理学の立場から理解し、その支援について述べたものである。まず、問題行動を理解する上で、学級集団という「集団のなかの児童生徒」という視点に立ったうえで、個人要因と環境要因からアセスメントすることの重要性と、注意点について論じた。次に、本事例の見方・考え方のポイントとして、児童の思いと担任教師の考えに「ミスマッチが生じている」ことと、「個別対応と集団対応を整理できていない」点を指摘した。最後に、これらの点を考慮した支援のあり方について、中学年という発達段階と、指導の対象は誰か、どの場面が適切なのか、ということを考慮することの重要性を論じた。

第2特集:新学習指導要領における指導と評価(2)●小学校算数

前富山県南砺市立福光東部小学校長  中川愼一

★「数学的活動の一層の充実」「統計教育の充実」などの改訂のポイントを把握して指導に臨むことが重要である。また、総則、教科目標、学年目標、内容、評価などのすべてが「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱によって構造的に示されている。この趣旨を読み解き、目指すべき資質・能力を偏りなく育成していけるように授業を改善・充実させていく必要がある。
★そのためには、事象を数理的に捉えて、数学の問題を見いだし、問題を自立的、協働的に解決する過程を遂行するなどの数学的活動が大きな役割を果たす。数学的活動の質を高めていくことが求められる。

第2特集:新学習指導要領における指導と評価(2)●中学校数学

東京学芸大学名誉教授  藤井斉亮

★今回の改訂では小中を通して「数学的な見方・考え方」が重視された。「数学的な見方・考え方」は三つの柱の二番目「思考力・判断力・表現力等」に密接に関わるように見える。だが、一番目の柱である「知識・技能」を獲得する際にも「数学的な見方・考え方」を働かせる必要があり、そうしないと生きて働く知識・技能として身に付かない。三番目の柱「学びに向かう力・人間性等」においてもどう社会と世界に関わるかというとき「数学的な見方・考え方」は重要な役割を果たすべきであろう。「数学的な見方・考え方」は三つの柱すべてに働くものである。その上で授業を数学的問題解決過程として展開する授業改革が求められている。

第2特集:新学習指導要領における指導と評価(2)●小学校理科

十文字学園女子大学教授  塚田昭一

★理科で育成を目指す資質・能力を育成する観点から、自然に親しみ、見通しをもって観察、実験などを行い、その結果を基に考察し、結論を導き出すなどの問題解決の活動の充実を図る。
★理科を学ぶことの意義や有用性の実感及び理科への関心を高める観点から、日常生活や社会との関連を重視する。

第2特集:新学習指導要領における指導と評価(2)●中学校理科

上越教育大学教授  小林辰至

★中教審答申では、理科における「知識・技能」について、「自然の事物・現象に対する概念や原理・法則の理解、科学的探究や問題解決に必要な観察・実験等の技能などが求められる。」と記している。このことから、探究や問題解決に関わる手続きと実験器具等の操作等に関わる知識と技能を含む、幅広いものとして捉える必要がある。次期学習指導要領では、「ア 知識・技能」と「イ 思考力・判断力・表現力等」が書き分けられているが、生徒の学びの過程においては、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力等」は不可分の関係にあり一体となって育成されるものである。「知識・技能」に関しては「規則性を見いだして理解すること」、「イ 思考力・判断力・表現力等」に関しては「規則性や関係性を見いだして表現すること」等と表記されているように、子供の学びの過程と結果を両面から捉えた指導の改善と評価が求められている。

第2特集:新学習指導要領における指導と評価(2)●小学校図画工作

京都市立西京極西小学校長  中下美華

★図画工作科においては、表現及び鑑賞の活動を通して、生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力を育成すること、造形的な見方・考え方を働かせ、表現及び鑑賞に関する資質・能力を相互に関連させながら育成することを重視して目標及び内容の改善・充実を図っていくことが改訂の基本的な考え方として示された。
★この考え方を踏まえて図画工作科で育成する資質・能力が三つの柱に整理された。その上で、図画工作科における「目標及び内容の改善点」についてまとめた。また、実際の授業を実現していくに当たり、「主体的・対話的で深い学び」「授業で大事にしたいこと」「学習評価」について検討した。

第2特集:新学習指導要領における指導と評価(2)●中学校美術

環太平洋大学副学長  村上尚徳

★今回の改訂では、教科目標において、中学校美術科は「造形的な視点を豊かにもち、生活や社会の中の美術、美術文化などと豊かに関わる資質・能力」を育成する教科であることが明示された。その実現のために、内容において、A表現の発想や構想と、B鑑賞の指導事項が関連するように示された。これにより、絵や彫刻などの心情などを表す美術、デザインや工芸などの装飾・伝達・使うものの美術などの中心となる考えを深め、思考力、判断力、表現力等を育成することが重視された。加えて、〔共通事項〕が知識に関する事項として整理され、生徒の中に造形を豊かに捉える視点として、しっかりと根付かせていくことが重要になる。

連載

QUを活用した学級づくりと学力向上(5)特別活動を通した学級集団づくりの考え方と実際 岩手県葛巻町立葛巻小学校長
藤村 一夫
合理的配慮が求められる時代の特別支援教育(5)チームで行う特別支援教育-管理職の役割 高知市立城西中学校長
吉本恭子
役に立つ教育カウンセリングの技法(5)シェアリング 北海商科大学教授
大友秀人
評価結果の戻し方(3)日本における評価結果の戻しの研究知見(1) 国立教育政策研究所総括研究官
山森 光陽
教師力アップセミナー(5)主体的・対話的で深い学びの実現 京都文教大学准教授
大前暁政
私のカウンセリング道程を語る(5)関西学院大学助手時代-ソーシャルワークとの出会い 東京成徳大学名誉教授
國分 康孝
子どもの問題行動-子どもが問題なのか?学校が問題なのか? 東京成徳大学教授
新井邦二郎
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