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理科室にたたずむ白衣姿の女性教師の言葉に，やんちゃ盛りの中学生たちがうなずき，笑い，そして一斉にグループディスカッションを始める。
チャイムどおりに理科室での授業が始まることも中学校ではむずかしい時代だが，鹿嶋先生の理科室には，休み時間のうちに生徒たちが，われ先にとやって来る。あとで聞くとちょっとした仕掛けがあるそうだ。
思春期の中学生はむずかしい。まして女性教諭ならなおさらだろう。しかし鹿嶋先生の教室にいる生徒たちは，時間や規則を守り，教師に従っているが，なぜか教師との距離が近く，快活なのだ。

鹿嶋先生のいる東京都の足立区では学校選択制が導入されている。いまは「選ばれる学校」である蒲原中学校だが，かつては混乱した時代もあった。
平成11年度に構成的グループエンカウンターを通した人間関係づくりの実践を始めたときに，鹿嶋先生は中心にいた。前任校でエンカウンターに出会って以来，自分の担任する学級や授業で，エンカウンターを取り入れていたのだ。
蒲原中学校では，日常の人間関係づくりのほかに，宿泊行事や文化祭などの学校行事を自己の確立の契機として，エンカウンターを生かした展開を行っている。
全国にエンカウンターの実践者は多いが，学校組織で取り組んでいるところ，エンカウンターに詳しくない先生も自分なりの取り入れ方をしているところ，それが実現できるチームワークと高い教科指導スキルを持つ先生たちが存在するというのは稀少な例である。
蒲原中学校の軌跡は，『公立学校の挑戦』（河村茂雄ほか編著・図書文化）で紹介。

鹿嶋先生は前任の渋谷区立鉢山中学校で，藤川章先生（現･杉並区立天沼中学校長），石黒康夫先生（現･逗子市教育委員会教育部長）とともに，エンカウンターを取り入れた教育実践に取り組んだ。1996年以降のエンカウンタームーブメントを牽引する学校であった。 蒲原中学校に異動してからの鹿嶋先生は実は二足のわらじを履いていた。筑波大学大学院修士課程に通学し，４年前に修了している。めざすのは研究のできる実践家。優れた教育技術や教育観を「名人芸」として片づけるのではなく，いいものは取り入れ，自らのノウハウを伝えるためである。
そんな鹿嶋先生の夢は，構成的グループエンカウンターの効果を測る尺度を作ることと、集団構造の成熟過程について研究すること。いまは，日本教育カウンセラー協会の構成的グループエンカウンター研究会の仲間と共に研究に取り組んでいる。

鹿嶋真弓先生の実践がNHK「プロフェッショナル～仕事の流儀～」で紹介されました。
受験を控えた中学３年生の心の葛藤を支える鹿嶋先生の様子です。何をやるのかではなく，どうやるのかに教育実践の核が表れます。いち教師の実践がテレビ番組としてまとめられることで，その様子が全国の教師だけでなく，保護者や子どもに伝わるチャンスではないでしょうか。
　　NHK総合：2007年4月3日（火）午後10:00～10:44　※再放送も充実です

鹿嶋先生の単著はないが，重要な本で重要な役割を果たしている。代表的なものを紹介します。

★鹿嶋先生の主著
『ひらめき体験教室へようこそ』
『うまい先生に学ぶ　実践を変える2つのヒント』
『うまい先生に学ぶ　学級づくり・授業づくり・人づくり』

★鹿嶋先生が共同で編集したもの
『中学校　学級経営ハンドブック』
『構成的グループエンカウンター事典』
『非行・反社会的な問題行動～育てるカウンセリングによる教室課題対応全書３～』
『Ｑ-Ｕ式学級づくり　中学校』

★鹿嶋先生が編集に協力し，蒲原中学校の先生方の授業実践も生かされているもの
『授業スキル　中学校編』（河村茂雄・粕谷貴志編）
『学級タイプ別　繰り返し学習のアイデア　中学校編』（河村茂雄・上條晴夫編）
『学級ソーシャルスキルＣＳＳ　中学校』（河村茂雄・品田笑子・小野寺正己編）
　鹿嶋先生の授業は休み時間から始まっている。始業チャイムよりも早く理科室に来た生徒は、簡単な予備実験を見たり、自分でやったりすることができる。それを楽しみに我先にと理科室に生徒が滑り込んでくるのだ。「チャイム着席」をやかましく指導するだけでなく、生徒たちが自ら意欲的に授業にかかわりながら、時間を守ることを習慣化する工夫がちりばめられている。このような視点を含む授業のあり方を、鹿嶋先生や蒲原中学校の先生たちが分担して執筆しているのが、この『授業スキル』『繰り返し学習のアイデア』『学級ソーシャルスキル』。

★鹿嶋先生が分担執筆したもの
『エンカウンターで学級が変わる　中学校編　２』（國分康孝監修）
『エンカウンターで学級が変わる　中学校編　３』（國分康孝監修）