土田雄一
千葉大学教育学部教育実践総合センター准教授/教材開発研究会主宰
道徳で子どもの心揺さぶる,屈指の授業アイデアマン
●道徳の教材づくり・授業づくり
「最近ハマっているのが【ひらがなトランプ】。これが,また,すごいんですよ!」
目を輝かせてそう語るのは,道徳指導の講師に引っぱりだこの土田雄一先生だ。
読み物資料を用いたオーソドックスな授業から,エンカウンター・価値の明確化・ウェビングなど多様な指導方法を活用した授業まで,その守備範囲は広い。
目を輝かせてそう語るのは,道徳指導の講師に引っぱりだこの土田雄一先生だ。
読み物資料を用いたオーソドックスな授業から,エンカウンター・価値の明確化・ウェビングなど多様な指導方法を活用した授業まで,その守備範囲は広い。
●深まりと楽しさ
小学校の担任を続けるなかで,道徳の実践・研究を切り口に,教材開発や指導法の工夫を重ねてきた。
道徳の副読本(光文書院)に採用された自作の読物資料「ブラジルからの転入生」は,サッカーが得意なはずと思いこまれて困っていたブラジル人児童の体験から,人種的な偏見を考えさせた。また、「なんでくん」(光文書院)は,新指導要領の改訂の重点課題にもなっている,自律の心を育てる資料である。
エンカウンター「じゅげむジャンケン」では,友達の名前をもらううれしさから,心に芽生える思いやりに気づかせた。これは今でも人気のエクササイズだ。
ねらいをしっかり受け止めた教材づくりや授業展開はもちろん,土田先生の授業には「楽しさ」がプラスされる。
道徳の副読本(光文書院)に採用された自作の読物資料「ブラジルからの転入生」は,サッカーが得意なはずと思いこまれて困っていたブラジル人児童の体験から,人種的な偏見を考えさせた。また、「なんでくん」(光文書院)は,新指導要領の改訂の重点課題にもなっている,自律の心を育てる資料である。
エンカウンター「じゅげむジャンケン」では,友達の名前をもらううれしさから,心に芽生える思いやりに気づかせた。これは今でも人気のエクササイズだ。
ねらいをしっかり受け止めた教材づくりや授業展開はもちろん,土田先生の授業には「楽しさ」がプラスされる。
●トランプで人間関係づくり
土田先生は,授業にトランプを活用している。
「トランプをすること自体が人間関係づくりにつながる」と,土田先生は言う。
さらに,「子ども自身がトランプを使ったゲームを考え出すことを通して,創造力の育成とグループの人間関係づくりを行うことこそ,ねらいである」とも。
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前述の「ひらがなトランプ」には,数字とスート(マーク)のほかに,五十音の中の1文字と,その文字で始まるものの絵がかかれている(このトランプは,百円ショップで売っているところもいい)。
ひらがなトランプの例 「あ」=「あひる」の絵
この多様な要素をもつトランプを使って活動を行い,最終的には子どもたちに話し合わせて,新しくゲームを考えさせる。
例えば「7・5・3シリーズ」と呼ばれるトランプゲームは,「ブタのしっぽ」の応用版である。トランプを裏返して円形に置き,1人1枚ずつめくって真ん中に置いていく。7か5か3が出たら,みんなで手を出して,いちばん遅い人が真ん中に貯まっていたカードをもらう(持ちカードのいちばん少ない人が勝ち)。
ひらがなトランプを使って「7・5・3シリーズ」でしばらく遊んだら,これを手がかりに,子どもたちに新しいゲームを考えさせる。例えば「な・か・まシリーズ」。これは,数字ではなく,ひらがなで「な行」「か行」「ま行」が出たときに,一斉に手を出すという「7・5・3シリーズ」の応用編である。
これ以外にも,手元のカードを元に,ひらがなを使って「2文字言葉」や「3文字言葉」を作るなど,子どもたちの発想は自由に広がっていく。どんなゲームが楽しいかをワイワイ話し合う中で,協力関係が自然に生まれていく。
「トランプをすること自体が人間関係づくりにつながる」と,土田先生は言う。
さらに,「子ども自身がトランプを使ったゲームを考え出すことを通して,創造力の育成とグループの人間関係づくりを行うことこそ,ねらいである」とも。
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前述の「ひらがなトランプ」には,数字とスート(マーク)のほかに,五十音の中の1文字と,その文字で始まるものの絵がかかれている(このトランプは,百円ショップで売っているところもいい)。
ひらがなトランプの例 「あ」=「あひる」の絵
この多様な要素をもつトランプを使って活動を行い,最終的には子どもたちに話し合わせて,新しくゲームを考えさせる。
例えば「7・5・3シリーズ」と呼ばれるトランプゲームは,「ブタのしっぽ」の応用版である。トランプを裏返して円形に置き,1人1枚ずつめくって真ん中に置いていく。7か5か3が出たら,みんなで手を出して,いちばん遅い人が真ん中に貯まっていたカードをもらう(持ちカードのいちばん少ない人が勝ち)。
ひらがなトランプを使って「7・5・3シリーズ」でしばらく遊んだら,これを手がかりに,子どもたちに新しいゲームを考えさせる。例えば「な・か・まシリーズ」。これは,数字ではなく,ひらがなで「な行」「か行」「ま行」が出たときに,一斉に手を出すという「7・5・3シリーズ」の応用編である。
これ以外にも,手元のカードを元に,ひらがなを使って「2文字言葉」や「3文字言葉」を作るなど,子どもたちの発想は自由に広がっていく。どんなゲームが楽しいかをワイワイ話し合う中で,協力関係が自然に生まれていく。
●教材研究で高める柔軟さと創造性
土田先生を中心に,首都圏の熱心な先生方がに集まって「教材開発研究会」を開き,ひらがなトランプに限らず,さまざまなアイテムを授業に活かす実践を研究・開発している。参加者は教育上のねらいに対して柔軟な発想で切り込んでいく。研究会には熱気と笑顔があふれ,まるで小学校の教室のようである。
土田先生の柔軟さをとくに象徴しているのは,百均グッズを使った教材開発だろう。安いから自腹でも使えるという気安さだけでなく,売り場で目についた「品物」を使って何ができるか,考えるのが楽しいのだという。品物の形状や材質などの特徴を考えて,活用方法を考えるのが好きなのだそうだ。
道徳の指導だけではない。激安グッズを使って,子どもたちの人間関係をつくりながら,教材開発に挑むことを通して,土田先生は「教師の創造性を引き出す研修」も行っている。
土田先生の柔軟さをとくに象徴しているのは,百均グッズを使った教材開発だろう。安いから自腹でも使えるという気安さだけでなく,売り場で目についた「品物」を使って何ができるか,考えるのが楽しいのだという。品物の形状や材質などの特徴を考えて,活用方法を考えるのが好きなのだそうだ。
道徳の指導だけではない。激安グッズを使って,子どもたちの人間関係をつくりながら,教材開発に挑むことを通して,土田先生は「教師の創造性を引き出す研修」も行っている。
○人物紹介○
秋田県生まれ。千葉大学大学院教育学研究科修士課程修了。専門は道徳教育,国際理解教育,教育相談。日本生徒指導学会会員,日本教育カウンセリング学会所属。千葉県内の小学校教諭をスタートに,ヨハネスブルグ日本人学校教諭,市原市教育センター指導主事,千葉県子どもと親のサポートセンター指導主事を経て現職(5年間の人事交流)。趣味は凧づくりで,小学校や公民館で講師をする。NHK「道徳ドキュメント」「時々迷々」番組委員。
○編著書籍○
こころを育てる創作トランプ -ゲームで進める「学級づくり・人間関係づくり」-
100円グッズで学級づくり -人間関係力を育てるゲーム50-
100円グッズで授業づくり・小学校 -かかわる&学ぶ!-
NHK道徳ドキュメント モデル授業 -感動・葛藤から学ぶ新しい道徳の実践-
○資料「ブラジルからの転入生」
小学校 こころを育てる授業 ベスト17 諸富祥彦編集(分担執筆)
○「じゅげむジャンケン」
エンカウンターこんなときこうする!小学校編 より 「友人関係の固定化を楽しく防ぐ」
秋田県生まれ。千葉大学大学院教育学研究科修士課程修了。専門は道徳教育,国際理解教育,教育相談。日本生徒指導学会会員,日本教育カウンセリング学会所属。千葉県内の小学校教諭をスタートに,ヨハネスブルグ日本人学校教諭,市原市教育センター指導主事,千葉県子どもと親のサポートセンター指導主事を経て現職(5年間の人事交流)。趣味は凧づくりで,小学校や公民館で講師をする。NHK「道徳ドキュメント」「時々迷々」番組委員。
○編著書籍○
こころを育てる創作トランプ -ゲームで進める「学級づくり・人間関係づくり」-
100円グッズで学級づくり -人間関係力を育てるゲーム50-
100円グッズで授業づくり・小学校 -かかわる&学ぶ!-
NHK道徳ドキュメント モデル授業 -感動・葛藤から学ぶ新しい道徳の実践-
○資料「ブラジルからの転入生」
小学校 こころを育てる授業 ベスト17 諸富祥彦編集(分担執筆)
○「じゅげむジャンケン」
エンカウンターこんなときこうする!小学校編 より 「友人関係の固定化を楽しく防ぐ」