機関誌 指導と評価

2025年 10月号
  1. 2025年 10月号 vol.71-10 No.851  定価:450円
特集
❶次期学習指導要領への期待❷教師の自己開示・自己理解
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特集

❶次期学習指導要領への期待/次期学習指導要領は何をめざすのか

上智大学教授  奈須 正裕

★現行学習指導要領の熟成を基盤に、多様性の公正な包摂とデジタル学習基盤の効果的な活用にしっかりと取り組んでいく。これが、諮問文が次期学習指導要領に求める基本的な方向性である。形式・内容の両面における十分な「余白」の創出を足場に、学校や地域の自由で創意に満ちたカリキュラム編成を支える教育課程の基準とすることが大切である。

❶次期学習指導要領への期待/「中核的な概念」による学習指導要領の構造化

京都大学大学院准教授  石井英真

★現行学習指導用要領の延長線上に、深さ志向の学びを実現すべく、目標・内容の重点化・構造化が必要である。ビッグ・アイデアとも言われる、より統合的でメタな概念(中核的な概念・方略)を軸に目標・内容を構造化し、単元で問いと答えの間の長い学びをデザインすることが求められる。目標・内容の系統性を見やすくすることで、教師の側の教科内容理解をじわじわと高め、教科書網羅主義からの脱却につなげる。

❶次期学指導要領への期待/次期学習指導要領に期待することー小学校の立場からー

横浜国立大学大学院教育学研究科教授/教育学部附属横浜小学校校長  山本 朝彦

★小学校の立場から、次期学習指導要領への期待として三つのポイントをあげる。第一に、教師の創造性を重視した「柔軟なカリキュラム」の実現。第二に、個別最適な学びの基盤となり、教師の経験や勘を補完する「教育データ」の積極的な活用。第三に、社会情動的コンピテンシーを核とした「学びに向かう力・人間性」の構造化と可視化である。

❶次期学習指導要領への期待/次期学習指導要領に期待することー中学校の立場からー

全日本中学校校長会会長/大田区立志茂田中学校校長  青海 正

★世界に冠たるわが国の教育は、質の高い教師に支えられ、大きな成果を上げ続けています。しかし、教師の努力と熱意に過度な依存はできず、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことが必要です。理念や趣旨の浸透が道半ばである現行学習指導要領の熟成を踏まえ、これからの時代にふさわしいGIGAスクール時代の学習指導要領の在り方にについて考えてみます。

❷教師の自己開示・自己理解/教師の自己理解を深める教育相談

文教大学教育学部教授  会沢信彦

★「生徒指導提要」でも取り上げられている「生物・心理・社会モデル(BPSモデル)」は、教師自身が自己理解を深めるためにも有効である。「教室マルトリートメント」を行ってしまう教師は、適応的でないライフスタイル(色の濃いサングラス)、あるいは早期適応的スキーマを有している可能性がある。子ども期の逆境体験(ACE)が背景にあることも考えられる。自身の偏りを修正し、宿命を超えるために、教育相談の学びを勧めたい。

❷教師の自己開示・自己理解/教師自身の心の奥にある声に耳を澄ます

鳴門教育大学大学院教授  久米 禎子

★学校現場で起こる子どもをめぐる様々な問題に適切に対応するためには、子どもの内面を的確に理解し、その理解に基づいて効果的なコミュニケーションを図ることが重要である。子どもの沈黙や問題行動の背後には、言葉にできない感情や無意識の心の動きが存在することが多い。そうした子どもの「心の声」を聴くためには、教師自身がまず自分の「心の声」に耳を傾け、自己理解を深めることが求められる。

❷教師の自己開示・自己理解/教師の「心のくせ」に気づこうー毎日をラクにする認知行動療法のヒントー

埼玉学園大学人間学部心理学科准教授  泉水 紀彦

★教師は多くのストレスにさらされやすく、心の余裕を失いがちです。認知行動療法は、ストレスの背景にある「心のくせ」に気づき、柔軟な考え方へと切り替える手法です。
★セルフモニタリングやマインドフルネスを通して自分を見つめ、バランスのとれた思考と自己への思いやりを育むことが、教師の心の安定とよりよい人間関係につながります。

❷教師の自己開示・自己理解/子どもとの関係を「見える化」する教師のリフレクション

横浜国立大学教育学部附属教育デザインセンター助教  鈴木 洋介

★子どもの不適応状態は、“子どもの適応能力の不足”ではなく、“子どもと環境のミスマッチ”と理解することが重要である。
★子どもは、「教師という環境」の影響を強く受ける。そのため教師が、自分は子どもにとってどのような環境となっているのか分析して自己理解を深めることが必要である。

❷教師の自己開示・自己理解/授業に関するメンタルモデルを掘り下げる

国立教育政策研究所特任研究官  千々布 敏弥

★教師の多くは無意識のうちに判断準拠とするメンタルモデルをもっている。メンタルモデルによって教師は迅速に子どもの反応に対処できるのだが、それは一定の傾向をもつゆえに、メンタルモデルで対処できない子どもの指導や異なるメンタルモデルをもつ同僚とのコミュニケーションに苦慮することとなる。解決策はメンタルモデルを可視化し、変容させることである。

連載

巻頭言/教師の自己理解を深める契機や転機 学習院大学教授
秋田喜代美
次期教育課程における学習評価の改善策はこれだ!(6)教育課程企画特別部会第十回の配付資料から学習評価の方向性を考える(2) 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
明日の教育を拓くー研究開発学校の挑戦(5)町ぐるみで社会的実践力を育てる「地域創造学」 日本大学教授
山森 光陽
カリキュラム・マネジメント推進における校長のリーダーシップ(6)中高一貫校をつくり・育てるーデータに基づく様々な秘策ー 甲南女子大学教授
村川 雅弘
非認知能力を育てる心理教育ー子どもたちの自立的で協働的な学びを支えるー(1)なぜ、いま心理教育なのかー日本の子どもたちの状況と世界の学力観の潮流から考えるー 元創価大学大学院教職研究科准教授
大関 健道
教育の窓(72)生成AI時代のことばの力、考える力 前編 東京家政大学教授
平山 祐一郎
コーチングに学ぶ「対話力」(6)同僚性を高めるコーチング(2)ー対話的なQ-U分析で同僚性を高めるー 「教と育」研究所代表
内藤睦夫
つなぐ・つながる支援(7)子育て・親育ち支援ー広場型親子交流サロンと訪問型支援ー NPO法人 親学推進ネットこうのす 代表理事・埼玉県スクールカウンセラー
志賀 周子
データで読み解く子どもたちのいま(2)ぷりんP-Linの教育効果の見える化ー教育相談総合調査シグマで生徒の変容をみるー 東京理科大学名誉教授・日本生徒指導学会会長・OKC教育研究センター長
八並 光俊
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