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特集
❶エージェンシーを読み解く/エージェンシーとは何か、どう育むのか
★OECDはエージェンシーを提唱し、ラーニング・コンパスとティーチング・コンパスの中心に位置づけた。日本でも中教審答申で「主体的に目標を設定し行動する力」と定義され教育政策に組み込まれたが、概念の学術的整理が必要で、「主体性」との違いを明確化する必要がある。社会学・心理学・教育学に根ざすエージェンシーは、意図的行為による変革と解放の力で、対話と物語りを通して育まれる。
❶エージェンシーを読み解く/エージェンシーとウェルビーイング-世界の教育潮流を読み解く-
★OECDが提唱した枠組みである「ラーニング・コンパス2030」および「ティーチング・コンパス」に基づいて、いま世界的に重視されているエージェンシーとウェルビーイングについて、生徒側と教師側の両面から読み解く。いずれの概念も個人のみならず社会的、環境的要因の重要性が強調されており、教育実践においては、協働的な学びをどのように教育目標に位置づけ、評価に反映させていくかが課題となる。
❶エージェンシーを読み解く/エージェンシーを発揮するための学びの推進プロジェクト
★群馬県教育委員会では、令和6年に「エージェンシー」を重要概念として位置付けた教育ビジョンを策定し、これを県内の学校に浸透させるためのプロジェクトを進めている。子どもたちのエージェンシーがより良く発揮されるように、「自己決定」「対話・交流」「試行錯誤」を重視した教育活動を推進し、予測困難な時代を生き抜く「自律した学習者」の育成を目指す。
❶エージェンシーを読み解く/「エージェンシー」の育成を目指す教育課程-特別支援学校における実践-
★本校では、OECDが打ち出した「エージェンシー」概念を「周囲との関係性を重視した主体性」と独自に定義し、教育課程に落とし込んでいる。新領域「私の時間」を中心に、AAR(見通し・実践・振り返り)サイクルを通じて、生徒が自らの学びを調整し、他者との協働の中でウェルビーイングを目指す教育実践を展開している。
❷不快感情のコントロール/脳機能と感情マネジメント
★感情は、生命の基本を司る基本的な脳機能の「低次の脳」で分泌される脳内物質の影響で発生し、主観的な体験としての気分と身体的反応として意識される。表現するときは、言語、記憶、注意、思考、学習などを司る「高次の脳」の側頭葉で感情語としてネーミングされ、前頭葉で因果関係を分析して対応策を立て、様々な形で表現される。感情をマネジメントするには「感情語」を増やし「感情を起こしている要因」を客観的に俯瞰して分析する力、および適切に表現するソーシャルスキルを育成する必要がある。
❷不快感情のコントロール/抑うつ・不安感情のマネジメント
★抑うつや不安などの感情面の問題は、多動や非行などの行動面の問題に比べて周囲の大人が気づきにくいという特徴をもつ。感情面の問題に効果的な支援を行うには、感情面の支援と行動面の支援を整理することが重要である。抑うつや不安への心理学的支援として、認知行動療法の有効性が実証されている。特に、第三世代の認知行動療法として知られる「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」に焦点を当て、その実際を解説する。
❷不快感情のコントロール/見落とされやすい児童生徒の評価懸念とその対応
★評価懸念とは、他者からの否定的評価に対する不安や心配を指します。学校関係者から見ると、評価懸念の高い児童生徒は「いい子」「まじめな子」という印象をもたれるケースもあります。しかし、評価懸念は精神疾患や不登校などの学校不適応の問題と関連することが指摘されています。見落とされやすい児童生徒の評価懸念とその問題について紹介するとともに、支援の糸口について考えます。
❷不快感情のコントロール/学級集団を対象とした不安の予防教育プログラム「勇者の旅」
★不安やうつなどの問題に対して効果があるとされる認知行動療法は、近年、学校現場での予防教育にも活用されつつある。認知行動療法に基づく不安の予防教育プログラム「勇者の旅」は、小学校で実施した複数の研究において有効性を確認している。学級全体で「勇者の旅」に取り組むことにより、不安の高い児童生徒の数を減らすことができるだけでなく、不安の生じにくい学級環境が形成されることも期待できる。
❷不快感情のコントロール/アサーション・トレーニングを生かした学級経営-安心して自己表現できるために-
★アサーションは、自分も相手も大切にする自己表現です。自分の気持ちに正直になることが大切です。不快な気持ちは、「不快だ」という気持ちを表現できないときに生まれます。そのためには、言語環境がよく、人権が尊重される安心・安全な集団へ学級を育てることが重要です。不快な感情を正直に認め、それを表現できれば、いまの自分を受け入れ、別の感情に気づき、新たな自己発見や自己理解につながり、心が成長します。
連載
巻頭言/「学びのエンゲージメント」は「エージェンシー」をはぐくむ | 応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授 櫻井茂男 |
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次期教育課程における学習評価の改善策はこれだ!(7)妥当性・信頼性を高めるために豊富な評価事例は不可欠-国語「書くこと」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
明日の教育を拓く-研究開発学校の挑戦(6)教育課程開発から授業実践にわたる研究開発の意義と課題 | 日本大学教授 山森光陽 |
カリキュラム・マネジメント推進における校長のリーダーシップ(7)得意なICT教育の経験・知識を学校経営に生かす | 甲南女子大学教授 村川 雅弘 |
非認知能力を育てる心理教育-子どもたちの自立的で協働的な学びを支える-(2)学校における心理教育実践のプロセス・モデル-学校全体で心理教育に取り組むための8つのステップ- | 元創価大学大学院教職研究科准教授 大関 健道 |
続・算数科で育てる「思考・判断・表現」する力 数学的な見方・考え方を引き出す教材(1)円と正方形を組み合わせた形の面積について考える | 明星小学校副校長・前筑波大学附属小学校副校長 夏坂哲志 |
教育の窓(73)生成AI時代のことばの力、考える力 後編 | 東京家政大学教授 平山祐一郎 |
熟達教師たちの「実践知」を語る(7)「振り返り」を通して自分の「生き方」を綴る | 日本赤十字東北看護大学准教授 岩本宏幸 |
つなぐ・つながる支援(8)発達障害のある子への支援-トラウマケアも視野に入れて- | 母親研究所代表・心理療法士 坂本州子 |
データで読み解く子どもたちのいま(3)「ぷりんP-LinⓇ」といじめ・不登校の未然防止・早期発見対応 | 埼玉大学教育学部准教授 中井大介 跡見学園女子大学心理学部教授 新井 雅 |
通常学級の特別支援教育(1)めざしたい学級像-目立つトラブルさえなければそれでよいのか- | 神奈川県立保健福祉大学教授 深沢 和彦 |