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学ぶことが大好きになるビジョントレーニング

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活用事例

長野県N先生の事例

ビジョントレーニングの効果をWISC-Ⅲから考える
 『学ぶことが大好きになるビジョントレーニング』の132ページに紹介した事例の高校生のトレーニングが8ヶ月くらい経過しましたので,その効果が知能検査(WISC-Ⅲ)にどのように現れるのかをみたくて,検査に協力してもらいました。

 資料のグラフの赤い線は,3年前(中学2年生当時)の結果です。言語性には差がないように思いますが,動作性では差が出ているように思います。動作性の上昇が全検査の上昇につながっているものと考えられます。動作性では4つの下位検査の結果が向上し,変化のない下位検査が一つ,下がった下位検査が2つでした。
 群指数では,注意記憶は下がっていますが,他の3つは上回り,特に処理速度の向上が著しいといえます。これは,眼球運動が改善されたことが大きな要因ではないかと推察しています。彼には,図形認知のトレーニングはパズルだけで,眼球運動改善のためのトレーニングを多く実施してもらいました。眼球運動が改善されるとともに,知能検査の結果にこれだけ顕著な変化が現れたのは驚きでした。

 継続してビジョントレーニングを実施していらっしゃる先生方,ぜひトレーニング前と後の検査を比較してみませんか。私には無理ですが,何が改善されるとどの下位検査や群指数に影響があったり,トレーニング内容と検査にどのような関係があったりするのかを,いつか明らかにしてくれる人が出てくるのではないでしょうか。楽しみにしています。

 以下は,彼の近況報告です(昨年度末の面談から)。

・字の乱雑さを指摘されることがなくなった。
・成績が向上し,アルバイトができるようになった(成績がよくないと学校からアルバイトに制限がかかる)。
・テニスがかなり上達し,今まで歯が立たなかった相手にも勝てるようになった。地域でベスト4位に入れるようになった。

 これらすべてがビジョントレーニングの成果かどうかはわかりませんが,その一端を担えたと思います。努力しても漢字を覚えられなかった原因がわかり,トレーニングでその成果を実感でき,彼が自信をつけていったのは確かです。いろいろなことができるようになったことも大きな成果ですが,彼が自信をつけてくれたことこそが,何より大きな成果であったと思います。ビジョントレーニングを勉強して本当によかったと思います。【2010/1/13】

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トレーニング対象者の年齢・性別

・高校/専門学校

・男

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書籍の事例のその後です。

神戸市「きこえとことばの教室」M先生の事例

発音練習とビジョントレーニング
 ことばの面に気になるところがある女の子の事例です。小2のときに,発音の主訴で,きこえとことばの教室に相談にきました。音韻処理の苦手な傾向がうかがわれ,本人が自信をなくしていることも気になりました。
 また主訴とは別に,漢字の読み書きや筆算にも苦手さが見られたので,視知覚や眼球運動の検査を行いました。すると,形の認知には大きな問題は見られなかったものの,形の記憶と眼球運動の未熟さが顕著に見られました。

■相談時の様子
【文章の視写】正しくていねいに書けるが,とても時間がかかる。
【読み取り】黙読ができず,口の中でぶつぶつ言いながら進める。途中で疲れて止めてしまう。
【運動】苦手で,特にボール運動は嫌い。
【算数の筆算】指を使いながら計算するが,どこに書いてよいのか時々わからなくなる。
【眼球運動】上下の追視はなんとか指示どおりに動かせるが,左右の追視とサケード(跳躍性眼球運動)は苦手。回転する時には注視できず,頑張ると眼球が揺れる。輻輳は両眼がほとんど寄らない。

 ふだん読むのは絵本が多く,宿題の本読みは嫌がり,漢字の練習は見ていないとしないということでした。テレビやゲームは好きですが,少しの時間見ると,すぐにやめてしまいます。このことは,本児のためには良いと,保護者は気にしていませんでした。

■きこえとことばの教室で行った指導
・PCソフトを使った眼球トレーニング ・形のパズル
・ゴムを使った形操作  ・図と地のトレーニングプリント
・紙風船でバレーボールゲーム など

■指導中の経過と効果
 パズルやプリントの課題にはとても楽しそうに取り組みましたが,眼球トレーニングをすると,2~3分で目をこすり,疲れたと訴えました。初日は5分程度の練習でしたが,初めて教室でトレーニング教材を使用した日は,自宅に帰ってからとても疲れた様子だったと保護者から聞きました。
 その後は徐々に慣れてきて,本児も喜んで取り組むようになってきました。週に1回の教室での練習のほかに,自宅でもトレーニングをしてもらうことをお願いしました。

 3ヶ月たった頃に改めて眼球運動を検査すると,まず注視が可能になり,左右・回転・サケードの追視がほとんど問題ない程度まで改善していました。家でも本読みを嫌がらなくなり,漫画や量の少ない物語を読むようになったそうです。
 それが自信となったのもあり,教室での発音の練習も楽しみながらできました。すると,半年以上かかったのですが,構音が改善し,本読みが積極的になり,自分の気持ちもよく喋るようになりました。とにかく自信がついたのがよかったようです。【2010/1/12】

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トレーニング対象者の年齢・性別

・小学校

・女

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言語の「読み書き」と「話す」の両側面を指導した実践で,大変興味深いです。

長野県M先生の事例

違いスッキリ:カタカナ編 (ジオボード→点つなぎ)
 小学校低学年で,中度から軽度の知的な遅れのある自閉症の子どもさん。書字指導を開始しましたが,模写や視覚形態完成に苦手さがあり,特に斜め線の傾き・止め・はね・接点に意識が向きにくく,なかなか正確な文字が書けるようにならず苦戦していました。
 そこで,パソコンでの眼球運動・なぞり書き等のプリント教材と併用でジオボードを使ったスモールステップでのトレーニングメニューを追加してみました。

◆ジオボードを使ったカタカナトレーニングの例

(1) 筆順を色分けし,隅に小さく平仮名も書いた,カタカナの見本を用意する。「アヒルのア」「イヌのイ」……と声に出しながら,見本を見て,50音順にカタカナを作ってみる。できたら,ジオボードをお手本の上に重ねて確かめる。
(2) 見本から筆順の色分けをなくす。(1)と同様に,声に出しながら50音順にカタカナを作ってみる。見本は,L判の写真用紙に印刷して,リングで束ねても扱いやすい<資料1>

(3)  ジオボードを2つ使い,似ている字(「ア」と「マ」,「ヌ」と「ス」など)を並べて作ってみる<資料2>

(4) 点つなぎプリントに,見本どおりに書いてみる。鉛筆よりもカラーサインペンで書く方が子どもが喜びます。<資料3>

(5) リーダー線付きのノート(8マス)に,鉛筆でカタカナを書いてみる。

 この子どもさんの場合は,一気にノートのマス目まで小さくせずに,A4サイズのプリントで段階的に指導していきましたが,A4サイズの紙に8マスぐらいの大きさが,一番違いを区別して書きやすいようでした。市販のノートでは,音韻を意識できるよう,しりとり遊び等の課題で,絵を見て言葉遊びをしながら書字練習ができるように工夫しました。

 それまでは,「上はとびだすよ」「ここはくっつくよ」と,その都度書き示しながら,言葉でも説明して,つきっきりで指導していましたが,ジオボードを使うようになってからは,一人で課題に取り組めるようになりました。「先生,カタカナ・輪ゴム やりたいよ」と,やる気満々。あれほど苦戦していたのがうそのように,スッキリ定着しました。今は漢字学習にも,ジオボードが活躍中です。【2010/1/6】

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長野県M先生の事例

トレーニング対象者の年齢・性別

・小学校

・女

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004katakana_card.doc
004siryo1-3.doc

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資料は2つともワードファイルです。
katakana_card:ジオボード用のL判写真サイズカード
siryo1-3:文中の<資料1~3>

ビジョントレーニング倶楽部 K様の事例

遊びながら,楽しく少しずつ
 小学校3年生の男の子で,週1回,通級教室に通っています。本読みが苦手で,読んでいる場所を見失う,同じところを2度読んでしまうなどのことがあり,球技など運動全般に苦手でした。集中力の持続も難しい状況でした。
 検査をしたところ,両眼をよせる力が弱く,眼球運動,眼と手の協調性,図形認識にも問題がありました。

 週1回,1時間,次のようなトレーニングに取り組みました。
・ビジョントレーニングPCソフト  ・ひらがなチャート読み
・ひも付きお手玉にタッチ  ・バッティング練習
・数字に順番にタッチ  ・ブロックストリング
・迷路  ・間違い探しの本  ・3Dの本
・ジオボード  ・パズル  ・バランスボード

 6ヵ月後,ひらがなチャートの読みなどが向上し,眼と手の協調性,図形認識も向上しました。板書の速さもクラスで最後だったのが,真ん中くらいに終わるようになりました。本も自分から読むようになり,通級教室を卒業しました。
 楽しく遊んで,いつも汗だくでトレーニングしました。本人が興味を持って取り組めたので,自信につながり,どんどん上達しました。ご両親に視覚の問題について理解していただき,温かく見守っていただいたことも上達につながったと思います。【2009/12/28】

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トレーニング対象者の年齢・性別

・小学校

・男

東京都特別支援員 O様の事例

涙から笑顔へ
 サッカーが大好きで活発な小学校1年生の男の子。
 読み書き・算数教室で一緒に学び始めましたが,音読や漢字練習への苦手意識が強く,「やらないといけない」と思うだけで涙が出てしまい,本やプリントを見る度に「目が痛い」「頭が痛い」と繰り返しました。
 具体物を使っての数指導や,プリントの絵を参考にしながらの指導,漢字の書き順指導の中で辛そうな様子が見られたので,お母様にお話しし,視機能の検査を行いました。

 追従・跳躍ともに眼球運動が弱く,横・縦・斜め・時計回り・反時計回り全てにおいて,うまく目で追えず,顔を大きく振る様子が見られました。輻輳は,右目がほぼ寄らない状態でした。読みの検査でも,読み飛ばしや行飛ばしが多く,時間もかなりかかりました。
 結果から,以下のようなことが予想されました。
1)眼球運動がスムーズでなく,文字を目で追う事が苦手。
2)線のつながりが捉えにくく,ひらがなや漢字をうまく模写できない。
3)視覚情報をうまく処理できず,プリントの中から必要な情報を探し出せない。
4)一文字一文字を読んでいると,文章として頭に入らず,意味がつかめない。

 毎回,泣きながら教室に来る彼に,「よく見えるようになると,サッカーがもっと楽しめるようになるよ」と話し,「楽しい事だけやろうね!」の声掛けでトレーニングを始めました。
 ビー玉を転がして小さなカップでキャッチしたり,動く指先へのタッチ,パーカイトリ-ブロックやジオボードを使用しました。遊び感覚で楽しみながら,そしてたくさん誉めながら行いました。
 授業で使う漢字プリントや指導用紙には,一画一画に色を入れ,線が識別しやすいようにしました。文章には,黄色の蛍光ペンで線を引き,さらに文節毎に緑色のペンで斜線を入れることで,落ち着いて取り組めるようになりました(さまざまな色を試した結果,これが本人にとって一番読みやすいとのことでした)。本を読む時は,黄色いシートを被せると読みやすくなるようなので,毎回使用しました。

 2ヶ月程で,顔を全く動かさずに追視できるようになりました。字もとても上手になり,新聞社主催のひらがなコンクールで金賞をもらいました。大きな金メダルは,何よりの自信になりました。
 また「見える」ことを実感できており,大嫌いだった音読の宿題も,今では得意げに読んでいるとのことで,お母様の笑顔も見ることができました。漢字の書き取りミスが減り,書き順で迷う事もなくなりました。
 自信がついて笑顔で学習に取り組めるようになったことは,ビジョントレーニングから得た最大の効果です。【2009/12/25】                      

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